ももと先生4
4
先生:こんにちは。
もも:はい、こんにちは。先生、私はほんとうにばかものです。
先生:そうなんですか。
もも:はい。未来のことを全然予測できないし、自分の都合のいい未来しか考えられないんです。
先生:未来は、難しいですよ。
もも:そうなんですけど。勝手に先のことを都合よく想像して、そのとおりに行かなかったとき、本当にびっくりするし、私と結果との間のギャップに、うちひしがれます。
先生:そうなんですね。びっくりするんですね。
もも:びっくりするというか、がっかりするというか、わたしはなんてばかなんだというか。
先生:けれど、もっとバカな人もいますよ。
もも:むかし、自分のばかさにびっくりして寝込んだことがあります。それで、寝ながら私よりもっとばかなひとはもっと辛い思いをしてるに違いない、と勝手に考えていたら、それがかわいそうで、ディプレッションになりました。
先生:はは、それは、なんかへんてこですね。
もも:へんてこですか。
先生:勝手に人の境遇と気持ちを想像して、勝手に落ち込んでるんですね。
もも:そうなんです。
先生:はは。
もも:今日はアルバイトの面接に行ったんですけど、全然想像していたふうに進みませんでした。面接では、職員さん四人が並んで私一人と対面して、アンケートを書かされて、質問をたくさんされて、ジャッジされて。
先生:それが面接ですね。
もも:私は、私と、採用担当のおばさん一人が小さな机に向かって、にこにこ話して、じゃあ、来月から来てください。必要な書類はこれとこれです。ここにハンコをおしてください。 と言われると思っていたし、それ以外かんがえていませんでした。
先生:どうしてですか。それは面接ではなくて、にこにこお話ですよ。
もも:どうしてかわかりません。面接会場に行くまで私の信じる未来以外に他の状況があるということすら気づきませんでした。
先生:そうなんですね。妄信だ。
もも:ほんとにそうですよね。加えてばかなのが、わたしは今のアルバイト先に、今月でやめますと既に言ってしまったんです。
先生:それは、順序を間違えましたね。
もも:はい。それで、面接が終わってから落ち込んでいます。当然受かると思っていたので、必要になるであろう書類と印鑑をリュックにいれていたのが本当に不憫です。
先生:自分が不憫なんですね。
もも:はい。楽観的で、未来が幾通りもあることをいつも忘れちゃう、それで思った通りにことが進まなくて困っちゃう、私がかわいそうだと思って、かなしくなります。
先生:自分が悲しいのではなくて、自分がかわいそうだと思って、悲しくなるんですか。
もも:そうですね。
先生:なんか、へんてこじゃないですか?
もも:どうすればいいのかな。
2022.09.06